市町村の合併―潮来市編

(茨城新聞より)
平成13年1月30日茨城紙

潮来町・牛堀町 市制施行を可決「大字」なくす名称変更も

改正合併特例法が施行され、合併時の市昇格の人口要件が3万人以上に緩和されたのを受け、潮来、牛堀両町議会は29日、それぞれ臨時議会を開き、4月1日から牛堀町を潮来町に編入合併し、同時に市制施行して「潮来市」とする議案をともに全会一致で可決した。市制施行は県議会の議決を経て、正式に決定される。

市制施行と関連して、潮来町臨時議会は、住所から「大字」をなくす名称変更議案も可決した。これにより、これまで使用されてきた両町の17区域の住所から「大字」がなくなる。(以下略)

2月17日茨紙

市 議 会 の 運 営 を 協 議
潮来牛堀両町議が合同研修会

潮来町と牛堀町の両町議会議員が16日、牛堀町内のホテルで本年度の合同研修会を開き、4月の両町合併、市制施行に向け、市議会の運営方法を話し合い、市議会に予算、決算、環境の三特別委員会を設置する方針などを確認した。両町の全34議員が出席して、活発な議論が交わされた。

市議会の運営方法については、両町議員の代表8人で作る幹事会で、議会規則、委員会条例、議会運営基準と申し合わせ事項などの各案がまとめられた。

三特別委員会は幹事会の提案事項。予算、決算を特別委員会で審議するほか、環境特別委員会は、一部事務組合の二町環境衛生組合が合併に伴い解散するのに関連して設置される。

潮来市議会は合併特例法が適応され、現在の両町議を合わせた全34議員で構成される。各常任委員会の定数が提示されたが、両町議の配分や役職について結論が出ず、各町議会で再度諮り、結論を出すことになった。

両町の合併は、牛堀町を廃し、その区域を潮来町に編入させる編入合併。合併時に市に昇格する人口要件が3万人以下に緩和された改正合併特例法の適用第一号となり、「潮来市」が誕生する。

4月1日茨紙「ひと」欄から

合併最大の功労者 牛堀町名誉町民になった森内捷夫(かずお)さん

「名誉町民は身に余る光栄だが、私一人でもらったのではなく、町民全員がもらったものだ。牛堀町長としての身分は終わるが、これからは一町民として、町発展に全力を尽くしたい。」
牛堀町の閉町式典で授与された名誉町民章を胸に、約13年にわたる町政を振り返り、思わず言葉を詰まらせた。強力なリーダーシップを発揮した”敏腕町長”とは違う表情だった。

1996年10月の町長選で、潮来町との合併を公約、三期目の当選を果たしたことが合併の発端だった。以来、両町の合併に対する気運は急速に高まり、自らも町長としての身分を退くことを表明して、積極的に合併を推進した。

合併相手の今泉潮来町長も「森内町長の決断がなければ、合併はあり得なかった」と言い、今回の合併で最大の功労者であることは間違いない。

「合併の効果がでるまでには5、6年かかるだろう。個々には合併しないほうがよかったと思える部分があるかもしれないが、大義を見失ってはいけない。」
 中央集権から地方分権に移行する新しい時代を見据え、合併には強い信念をもって臨んできた。市昇格の人口要件を3万人以上に緩和するなど合併特例法改正を国に精力的に働き掛けた。同法に基づく市昇格は全国に先駆けての適用となる。(以下略)
(ページ管理者補記:同氏はその後「合併関連の講師」として各地で活躍の様子であります。)

4月6日茨紙

牛堀担当助役を選任 潮来市で初の臨時議会

(案内:先進地の様子

潮来、牛堀両町が合併して潮来市が誕生後、初の臨時市議会が5日、旧両町議合わせた34議員全員が出席して開かれた。初議会では新設された牛堀地区担当の助役に小沢一広元牛堀収入役(58)を・・(以下略)・・助役は当面潮来地区担当の石橋達朗助役(元潮来町助役)小沢助役の二人制。・・(中略)・・名誉市民条例改正に伴い、牛堀町名誉町民の森内捷夫元牛堀町長ら5人が名誉市民となった。
同議会は合併特例法が適用され定数34。2003年1月に地方自治法が改正され、人口32,000人の潮来市の場合、法定数は26となる。

4月2日茨紙

検証潮来市<上>

変わらぬ現状―厳しい財政、残る格差
(案内:最近合併した県南の小都市ーその後の課題)

潮来、牛堀両町が1日合併し、潮来市が誕生した。全国に先駆けて改正合併特例法が初適用され合併の成否に注目が集まる。地方分権が進む中、まちづくの手段に合併を選択した潮来市。新市の課題を検証する。(麻生支局・沢 利彦)

合併を進める理由の一つとして、一般的に財政基盤の強化が挙げられる。だが潮来市の場合、財政事情の厳しさは当面変わりそうにない。
 市民税などの一般財源総額に対し、公債費や人件費などの経常支出の割合を示す経常収支比率は、潮来市が78.4%(1999年度)、牛堀町は82.8%(同)だった。

一般的に、経常収支比率が町村で75%、市で80%を超えると、財政の弾力性を欠き、新規事業が展開しにくくなると言われる。旧両町の経常収支比率から単純に割り出すと、潮来市の経常収支比率は80%前後になることが予想される。

厳しい財政事情の中。ごみ処理などを運営してきた2町の一部事務組合が合併に伴い解散した。これまでは特別会計の中で運営されてきたが、今後は一般会計への負担増などの影響も懸念される。「合併しても厳しいのは事実」と、役場職員は渋い表情を見せる。

合併により機構や職員数の見直しなども大きな課題となる。しかし、合併したばかりの現時点では、即座にスリム化ともいかない。市制施行で部長職が新設されたが、10人という人数や、給与面で、結果的に人件費がかさむ。助役も当面”2人制”で調整されている。

市の職員数は335人(1999年度)。国の目安では、人口10万人規模の職員数は人口100人に対し職員1人と言われる。潮来市の人口は約32,000人で、この目安を直接当てはめるわけにはいかないが、財政が苦しい中の現状ではやや多い計算となる。 

潮来市では、経費の主要部分を占める人件費のピークを迎える2003年度から徐々に削減していく計画を立てている。今泉和市長は「職員削減を前提にはできないが、いつかは減らしていかなければならないだろう」との認識を示す。市職員の資質向上を求める住民の声も強く、質と量のバランスをどうクリアするか、市長の手腕も注目される。

今回の合併で、潮来市の行政機構には潮来、牛堀両地区にそれぞれ農政担当課が置かれた。 コメの生産調整(減反)目標に格差があるためで、 旧2町の農政担当課によれば、率にすると旧潮来町で34%、旧牛堀町は約27%と7%の開きがある。

県によると、減反の推進方法が違うため、格差の明確な要因は不明という。牛堀の農協関係者は「(潮来に合わせて)一気に上げたら反発は大きい」と不安を口にする。

市の農政担当者は「市だけでは解決できない問題。国や県の調整が必用だ」と訴える。合併しても事情の違いを考慮した施策も求められ、課題は尽きない。  

4月3日茨紙

検証潮来市<中>

豊かさ求めて―福祉や教育、充実急務

「潮来市」をいかに住みたい町にするか。合併の成否は、住民一人ひとりが”合併して生活がよくなった”という実感を持てるかどうかにかかっている。

潮来市は早ければ本年度にも、二つの合併事業を実施する。
3歳未満の乳幼児に対して医療費を無料にする医療費助成制度(マル福制度)の適用年齢を6歳未満まで引き上げる。

もうひとつは、市内4中学校に学習指導員(T・T)を配置する計画で、数学や英語など主要教科に各校2人ずつ置き、学習効果を高める。

いずれも人材育成や子育て環境を整えるのが目的で、市内への定住促進を図るのが狙いだ。
市の人口は31,942人(2000年国勢調査速報値)。潮来、牛堀の旧両町が誕生した55年当時から比較すると約1.3倍の伸びを示し、順調に増えてきたことがうかがえるが、ここ数年は人口の伸び率にも陰りが見え始めた。5年前と比べ約200人減少するなど、人口増に向けた施策が求められた。 −中略ー
県内でマル福制度を延長している自治体は数例しかない。今泉和市長は「マル福制度は限られた人を対象にした制度となるが、重要な制度」と人口流出に歯止めをかけたい考えだ。

合併後の新しい体制づくりでは、国や県からのさまざまな財政支援を受けるとができる。主なものとしては、
国からは公共施設整備や地域振興のための基金積み立てなどの財源にするとができる合併特例債(地方債)、県からは
合併特例交付金、10億円以上の県事業を実施する「新市町村づくり支援事業」などあり、 合併することへの”ご褒美”的な意味合いを持っている。

これらの支援を受ける潮来市は合併初年度から10年間、都市基盤や生活基盤の整備、行財政の効率化などハード・ソフト両面に約300億円以上の建設計画(水郷潮来・牛堀まちづくり計画)を立てている。

今泉市長は2日行われた市役所開所式で「旧両町の住民の融和と一体感を持って、建設計画を進めていきたい」と市職員らに訓示した。新市民が豊かさを実感できるには、最低でもこの建設計画を達成することが条件となる。

4月3日茨紙

住みよいまちへ期待

潮 来 合 併 で 市 制 施 行
水戸県内初の特例市・式典開き決意新たに

合併で誕生した潮来市は2日、市役所などの開所式を行い、新市の業務が本格的にスタート。 (中略)

精一杯努力 潮来・今泉市長

式典では今泉市長が「人口32、000人の市が誕生したが、私たちを取り巻く環境は厳しい。市民、議会の協力なくしてはすばらしいまちづくりはできない。精いっぱい努力していこう」と職員に訓示を行った。 この後、市長らは約5キロ離れた同市牛堀の牛堀支所に移動し、同様の式典を行った。  (以下略)

9月14日茨紙

美術館計画は白紙にー合併支援事業で潮来市長

潮来市が誕生したのを記念し、県の合併支援事業で建設される「水郷潮来美術館(仮称)について、今泉和同市長は13日開かれた定例記者会見で、「(新市の)シンボルはじっくり考えるべきだろう。現段階で美術館計画は白紙し戻したい」と述べ、事業計画を見直す方針を明らかにした。美術館は旧潮来、牛堀両町の合併記念に県が10億円。市が4億円をそれぞれ支出して総額14億円で建設される計画。2003年度会館を目指し、昨年7月の合併協定書調印式で橋本昌知事が計画を発表した。

美術館建設をめぐっては、芸能人の作品をメーンに展示するとした内容に反対意見が相次ぎ、今年4月から市企画部内に検討委員会を設置し、展示内容の見直しを進めていた。市は美術館そのものを否定せず、新庁舎建設や統合後の小学校跡地利用などに関連して、県に要望する合併支援事業の中身について慎重に協議していく。その際、今月中にも市民を委員にした委員会を設置し、公共施設を建設するに当って広く意見を採り入れていく方針。

10月1日茨紙

首相出席で合併シンポ本県から潮来市長も参加

政府が推進する市町村合併の広報強化週間が1日から始まる。小泉純一郎首相や片山虎之助総務相が出席し、地方自治体関係者らと合併について考える全国シンポジウムが30日都内で開かれるほか・・・1999年以降に合併した潮来市、篠山市(兵庫)、旧与野市(埼玉)、旧黒崎町(新潟)の首長らによる体験座談会や、21世紀のまちづくりをテーマにしたパネルデイスカッションが行われる。・・・

・・・総務省の調査によると、合併に向けた協議会や研究会を設置している市町村は6月末で全体の約4割に達した。都道府県が設置する合併支援本部は37府県、合併重点支援地域は13県、19地域(81市町村)と着実に増えている。

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