利根町の昔話
(利根町昔ばなし 第2話 郷土史研究家 長島平衛著より)
むがし、むがし行基という偉いお坊さんいだ。行基は、行基菩薩(仏 の次に位する仏道の聖者のこと)とも云われ、全国を廻って仏の道を 説き、また人は「正しい行いをしなくてはならない」と教え、道路な ども造った人である。
ある日、行基がこの地の奥山にさしかがり、沼の横道を通って歩いて いた時、沼の中に浮かんでいる一本の木が目に映った。それをチラッ と見て、「何だ、浮木か」と見回し先を急ぐため足を早めようとした とき、何が気に引っかがるものを行基は感じた。「なんだろう、なん だ」行基は淵に戻り、浮かんでいる木をしげしげと見つめだ。一瞬光 ったようにも見えだ。行基は村の人に頼み、その木を岸に引き上げて もらった。
行基はその木を山の上に運び上げ、ゴザをひき、お経をとなえながら 刀やノミを使いその木を切ったり削ったりして、仏像をつくりあげて いった。やがて数日たつど、美しい観音様ができあがった。行基はこ の地奥山に立派なお寺を建で、その中にこの観音様を安置した。
これが奥山の観音様のいわれだ。昔は田植えの前(めい)にお参りし 、キリスネ(糸)を供え、前に誰か供えたものと交換し手首や足首に まくとケガをしねと(しないと)、大勢が参りにきた。また奥山は花 見といって、桜の咲く頃にはすごく賑やかなんだ。それから木が浮か んでだ沼、今でも観音沼ってゆってんだ。 '99.6.27記