利根町の昔話

第1話-お雪哀話 第2話-狂歌師抜村 第3話-明神の絵馬 第4話-蚊帳沼
第5話-奥山の観音様 第6話1-子育て地蔵 第6話2-不思議な男 第7話-笠ぬぎ沼

笠ぬぎ沼

(利根町生涯学習だより第20号利根町昔ばなし第14話より)
(郷土歴史研究家 長島平衛著)

昔、むがし、この年は「日照り」(長く雨が降らないこと)で、立木 村の百姓は困りはでていた。田という田は、カラカラにひ上がり(水 分がない、乾いた状態)稲はしおれだ。しかし、この様な中でも二枚 の田だけは水があった。その一枚は欲の深い男の田で、村の百姓がい ぐら困っていでも、水の一滴も分けてやろうとはしながった。もう一 枚は情け深く正直な男の田で、困っている人に水を分け与えていだ。

ある日のこど、立木村に一人のみすぼらしい男がやって来て、欲の深 い男の家の前で「のどがカラカラです。一杯の水をお恵み下さい」と いった。「お前の様な汚い者にやる水などない!」と欲の深い男は追 い返した。次に、正直者の家の前で「のどがカラカラです。一杯の水 をお恵みください」といった。「お前の様な汚い者にやる水などない !」と欲の深い男は追い返した。次に、正直者の家の前で「のどがカ ラカラです。一杯の水をお恵み下さい」というと「おや、お気の毒に 、どうぞお飲みくだされ」と与えだ。「ありがとうございます。この 恩は忘れません」と何度も頭を下げだ。

その夜、牛が何頭も鳴くようなものすごい声に、欲の深い男と正直者 の男は、共に目をさました。何ごとかと欲の深い男はが近づくと、昼 間水をもらいに来た男が寝ていだ。「うるさいいびきだ、早くどっか に行っちまえ!」と何度も棒でただいだ。次に正直者の男が来て、「 おや、かわいそうに・・・」と自分の着物をかけだ。

男は三日三晩眠り続け、四日目の朝目をさまし。「おまえは本当に情 けぶかいやつじゃな。わしは蛟もう神社の主だ。その心がけに感じ、 何でも望みを叶えてやろう」正直者はビックリして「何もほしくはあ りません」と答えだ。「欲のないやつじゃな」「最近立木村は雨が降 らず、稲が枯れそうで困っております。何とか雨が降ってくれればい いと思います」「そうか雨か、よく見ておれ」というが早いか、かぶ っていだ笠をぬぎ荒地になげ入れた。笠は地面に沈み沼となった。

「よいか今後、雨が降らなかった時は、この沼の水を汲み出せ、そう すると鳥居が現れ必ず雨が降るぞ」といった。正直者は早速立木村の 人々と沼から水を汲み出した。水が少しづつへり、やがて鳥居が現れ た。すると突然空が暗くなり、ザアーッと雨が降り出し稲もみるみる 青くなった。一方、欲の深い男の田は水がどんどんなくなり、稲が枯 れてしまた。この沼のことを、笠を脱いでできた沼「笠ぬぎ沼」とい うようになった。

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